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弁護士 亀石倫子&丸井英弘×東京ピンク〜大麻取締法改正の案とヒント〜 麻なびスペシャル大麻対談

1977年から80年にかけては、日本でも裁判でかなり展開できていた

-亀石さんに伺いたいのは、やはり大麻取締法の刑事裁判で勝つのは難しいでしょうか?

亀石 そうですね。大麻取締法がある以上、裁判官は法律に則ってでしか判断ができませんので無罪にするというのは殆ど無理でして、法律が変わらないと仕方がないんですよね。
なので大麻取締法の不合理性を刑事裁判の被疑者、被告人の弁護活動において訴えるのは極めて難しいアプローチだと思っています。
やはり先ほども述べた様に日本の社会が大麻に対して非常にアレルギーみたいなものがあって、ルール(法律)を破ったと言うことに対して非常に厳しい目を向ける訳ですよね。これはメディアもそうだと思います。
だから刑事裁判で「大麻取締法はこの部分がおかしい!」と訴えてもなかなかメディアや世論を巻き込んではいけないと感じています。

では刑事裁判以外の訴訟で何か法律のおかしさを争うことができる方法があるのか、たとえば立法不作為の違憲確認訴訟みたいな形(大麻取締法が改正されないことが違憲である)が可能かというと、それもまだ早いと思っていて。
なのでやはり、メディアを巻き込んで社会に対して正しい情報や諸外国の事例を発信していく。それに対して少しずつでも共感を得ていくことが「今」は大事なのかなと私は思っています。

– memo –
立法の不作為(りっぽうのふさくい)とは、憲法上国家法律を制定すべきところをその義務を怠り、そのために国民に損害を与えたことをいう。

 

-なるほど。丸井先生は如何ですか。

丸井 私も一緒です。40年前にアメリカで大きな動きがありました。(ニクソン政権下でのドラッグ政策に効果が出ず)
その勢いで当時1977年から80年にかけては芥川裁判もそうですが、日本でもかなり展開できた時もありました。
当時の毎日新聞の社説の論調も“たかが大麻で目くじらたてて”と。当時の全米委員会で2通の大麻を非犯罪化を勧告する報告書が出ています。
ニクソンは自分の思った内容の報告が出なかったので受理しなかったと。当時は早く裁判を終わらせたい被告人もいれば、必ず実刑だから大麻取締法を裁判で争うしかないと言う方々もいらっしゃいました。
そういった方には弁護団チームを組んで争った事があります。
日本を巻き込んでのものでしたから当時の日本の空気感は今とは全く違いました。

 

1987年8月28日 週間法律新聞

 

-それでも変わらなかった。やはり大麻裁判で勝つのは難しいとお考えでしょうか。

丸井 占領政策に於ける原発問題(裁判)と似ていると思います。

-お二人のご意見を伺いながら亀石さんのおっしゃられた「共感」と言うのはキーワードだと思います。
こういった日本の現状で正しい情報を発信して多くの人に共感してもらう。最終的に大麻取締法を改正する上で“いま必要なこと”なのだと感じてます。

法律の改正に必要なプロセスは最後には国会審議になる中で、その地点に到達する上で、世間の多くの人から共感を得る、考える機会をもってもらう、この様なことが国会審議のタイミングにたどり着くまでに裁判の勝ち筋を育てるのと同時並行で生じる“必ず必要なプロセス”なのだと個人的には考えています。

この対談を通して現時点で見えてきたのは刑事裁判や違憲裁判で争うとしても世間の「共感」がまだ足りていない。司法を舞台にするとどうしてもそれが原因で前に進まない、機能停止のままの状態が継続されているのかもしれないですね。

 

これまで弁護士で大麻取締法の規制根拠に関して発言していたのは丸井先生くらい。その事自体がおかしいなと感じました

亀石 共感どころか、正しい知識を知るというところにも達していない気がします。
私が大麻に関して発言すると必ず大麻を使ってるんじゃないか” “大麻を吸いたいだけだろというリアクションがあるのですが、それでも、医師や弁護士という専門家が「正しい情報」を発信していく事が必要だと思っています。
今まで大麻に関して熱心に発信してくださった方が沢山いらっしゃって、私もそれで勉強をさせていただいてます。
しかし、発信者に逮捕歴があったりすると、受け止める側が色メガネで見るというか「おまえが言うな」的なことも多い。

-それだけでシャットアウトする人はいますね。

亀石 だから、「誰が発信するのか」、というところも実際(現実に)は大事なところであって。
法律の問題なのに、これまでに弁護士で積極的に発言をしてきた方は本当に丸井先生しかいらっしゃらないのでは?と思うくらいです。

-そうですね。

亀石 私は丸井先生が過去の担当された裁判の書面や、厚生省麻薬課長への尋問調書も大変興味深く読ませていただきました。
やっぱり、法律家という立場で発信することが大事だなと思って、私も発信を始めました。
大麻や大麻取締法に関心を持ってもらったり、もしかしたら大麻は悪いものだと思い込んでいただけではないか?先入観なのではないか?そのように気づいてもらう切っ掛けになるかもしれないと今は思っているんですね。

-僕もそのご意見を伺いながら改めて感じた事がありました。
亀石さんの様に大麻自体には関心のない人がさらに弁護士である。そして法律の専門家という立場やこれまでの経験から感じる大麻取締法のへの違和感を発言されている。
それが丸井先生以降で出現した!その部分は本当に貴重だなと思っています。
そしてお話の中にあった「共感」と言うキーワードですね、誰が発信するのかと言うことも現状で成果をえるには大事だと思います。
その上で昇華された人の意識がどこに向かうのか。これはやはり「根本」に立ち返るものであると。それは何を指すかといえば本来は逮捕された人の言葉であろうが、誰の発言であろうが、大麻のことに関して発信をしている内容自体は変わらないわけで。
結局その様な専門家からの意見しか通りにくい、そんな状態を作っているのは情報をキャッチする側の色メガネが原因であるということ。
だからこそ“こんな現状だと把握した上で”こうした専門家からの発信という「戦略」があるだけであり、発信されている「真実や事実」には変わりがないということですよね。

現在の日本のCBDオイル市場の枠の中だけで大麻の議論が過熱しすぎると、真実や事実が薄くなる原因にも

-多くの人に大麻を知ってもらうきっかけとして例えばCBDオイル、飲料、化粧品などの製品が日本でも多少流行り始めました。
でもこれも日本の大麻取締法が作り出した罰則があるが故の無駄な状態(免許制による自国生産の厳しさ・花穂から成分を採取などは罰則対象など)であり、本物のあるべきCBDオイルとは違う部位からの製品(海外と同じ効果をえるものとは程遠い)をわざわざ作るという意味のないことを繰り返している。海外の製品とは違う日本独特のモノでブームとなりつつあります。
本来は分ける必要のない成分を分けた状態で市場に出回っていると言う事です。
この側面も掛け合わせて考えると多くの人に知ってもらうには専門家の意見や日本でも起きつつあるCBDオイルのブームは必要な側面でもあると思います。

一方で大麻に対して「本来は罰する必要のない植物である」という(日本で大麻を解禁するにあたりとても大切な本丸の)概念は、現在の日本のCBDオイル市場のように罰則規定のある中で商売が絡んでくる。
その「枠」の中だけで大麻の議論が過熱しすぎると真実や事実が薄くなる原因にもなってしまいます。
実際にTHCオイルを「毒」として販売をする業者やネットワークビジネス者が多いのもそれを表しています。
日本が正しい筋で大麻を解禁するには「幅広い共感」を多くの人から得る事が重要であると共に、正しい指針(ゴール)を示した上で双方のバランス(真実と色メガネに対する入り口戦略)をうまく保つ必要があるのだと感じました。

DON DON PUFF / LONSDALERS

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