エージェンシーの見立て

「ファッションと大麻は共生関係に近いものをもっている」と、合法大麻の広告スペースで数多くのクライアントを代表するPR会社、ノースシックスエージェンシー(North 6th Agency)のCEOであるマット・リッツェッタ氏はいう。「適切なファッションブランドと適切な大麻ブランド、つまり類似するオーディエンスに対して同じタイプのメッセージを宣伝しているブランド同士であれば、非常に良い組み合わせになる可能性が考えられる」。

 

雑誌「システム(System)」のマリファナ特集号向けクリーチャーズ・オブ・ザ・ウィンドのカプセルコレクション

雑誌『システム(System)』のマリファナ特集号向けクリーチャーズ・オブ・ザ・ウィンドのカプセルコレクション

 

たとえば、ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)やトリー・バーチ(Tory Burch)のようなコンサバファッションブランドにはふさわしいといえないだろう。しかし、前述したブランドのように、ブランドDNAに反骨精神があったり(ワング)、ほかのブランドと比べて、より奇抜であるもの(クリーチャーズ)は、キバ(Kiva)マインドフル(Mindful)のような台頭する大麻企業と、良識のある連携を図ることができるだろう。

「ファッションブランドは、自身のオーディエンスについて確認する必要がある。自分の顧客が大麻ムーブメントにポジティブな形で影響を受けているのであれば、それにまったく触れないでいると、返って彼らの不評を買うことになると私は思う」と、リッツェッタ氏は述べた。

メディアがプロデュース

クリス・ピータースとシェーン・ガビエがデザインする、クリーチャーズ・オブ・ザ・ウィンドは、マリファナを模した刺繍が特徴的な最新のプレフォールコレクションで、はじめてこの分野に手を出した。年2回発行のインディペンデントファッションマガジン、『システム』の共同設立者、エリザベス・フォン・ガットマン氏とアレクシア・ニードツェルスク氏は、これらの品々をとても気に入っている。クリーチャーズ・オブ・ザ・ウィンドのふたりのデザイナーに、4月12日付同誌9号のマリファナ特集のためにカプセルコレクションの制作を依頼したのは彼女たちだ。

 

ジャッキーアイチェのマリファナ草モチーフイヤリング

ジャッキーアイチェのマリファナ草モチーフイヤリング

 

彼女たちはその結果(2枚のTシャツとスウェットシャツ、アーミーパーカー1点、小売価格は135〜2500ドル[約1万3500円〜25万円])に感銘を受け、そのうちの1点のジャケットを表紙に使った(ほかならぬユルゲン・テラー氏によって水耕大麻農場で撮影された)。

「カナダで日の目を見ることのない医療用大麻施設は、雑誌『システム』の提示するストーリーと、はっきりと一致しないように見えるかもしれない。しかし、偏見なしに世界へ出れば、ファッションという枠を超えた活動に携わる人々に出会い、彼らの価値観や視点は、ファッションの発想法またはファッション自体の見方に新しい観点をもたらすことがある」と、『システム』のフォン・ガットマン氏は「デーズドデジタル(Dazed Digital)」に、その撮影について語った。

商品の売り上げは上々

クリーチャーズのガビエとピータースは、ロサンゼルスのジャストワンアイ(Just One Eye)というブティック限定のカプセルコレクションの販売に取りかかった。同ブティックの駐車場で開催された、あるローンチパーティーでは、マーレイナチュラル(Marley Natural)の食用大麻やそのほかの大麻商品も提供された。

ファッションと大麻という異なる世界を融合させることが、困難なプロセスであったかどうかを訊ねられたとき、このふたりのデザイナーは、出発点に関してそのふたつにそれほど相違はなかったと主張した。「マリファナは歴史的に、自由と創造と受容の象徴とされている。だから、それがファッションと対極にあるとは思わない」と、ガビエ氏は語った。

 

雑誌システムのマリファナ特集号向けクリーチャーズ・オブ・ザ・ウィンドのカプセルコレクション

雑誌『システム』のマリファナ特集号向けクリーチャーズ・オブ・ザ・ウィンドのカプセルコレクション

 

どうやら、販売にも苦労はないようだ。ジャストワンアイによれば、このコラボ商品はすぐに完売し、このふたりのデザイナーはさらにたくさんの作品を制作中とのことだ。これからのコレクションで大麻モチーフをさらに掘り下げていくかどうかについては、まだ決めていないと、彼女らは述べた。

スモーカー向けのブランドも

新しく誕生したニューヨークのブランド、サンデー・スクールVogue.comからハイプビースト(Hypebeast)と、あらゆるところで紹介されている)は、マリファナの世界にすぐに飛び込んだ。今年の4月20日(いうまでもなく、マリファナデー)にローンチされた「スモークウェア」ラインは、いまではニューヨークが故郷だという韓国生まれのシンディーとダエ・リム兄妹(姉弟)が考案したものである。

「サーファーのためのサーフウェア、スケーターのためのスケーターウェアがあるが、スモーカーのためのスモーカーウェアはない。だから、サーフィンやスケーティングのように、大麻使用をスポーツのひとつと考えた」と、最初のアイデアについてシンディー氏は語った。

 

サンデー・スクールの「スモークウェア」の初コレクション

サンデー・スクールの「スモークウェア」の初コレクション

 

そのスポーツでは、ダボダボのパーカーや、「honor rollers(栄光のローラーズ)」「let there be light(光あれ)」、「sinisterhood(悪党仲間)」といったロゴプリントのTシャツが必要とされているようだ。「いま出回っているものはすべて、あきらかにラスタに影響されたもの、あからさまにそのドラッグのイメージを利用したもの、または『get high, enjoy life(ハイになって、人生を楽しむ)』といったロゴがついたものばかりだ。自分たちはそれに違ったひねりを加えたかった」と、シンディー氏は語った。

米国外での反応はいかに?

確かに、これらの品々はマリファナに通常必要な道具のようには見えない。見たところ、バハや巨大な大麻草は描かれていない。古代韓国芸術に触発されたイラストはわずかにドラッグを匂わせており、ジョイントが至るところに隠されている。しかし、それを除けば、ドラッグとの関連を見つけることは難しい。

いま現在、サンデー・スクールの商品はオンラインショップでのみでの販売だが、6月からはこだわりのストリートウェアファンの多くを惹きつけるソーホーのVファイルス(V-Files)ブティックで販売が開始される。ブランド創設者たちは彼らのメッセージにならい、違法ドラッググッズ店のように場所に縛られた従来の境界を超えて、今年中にニューヨークや韓国でさらに何店舗か拡大を期待している。

 

サンデー・スクールの「スモークウェア」の初コレクション

サンデー・スクールの「スモークウェア」の初コレクション

 

リム兄妹(姉弟)は、売れ行きと反応はポジティブなものが大半だったが、偏見の多い市場でも同じかどうかを正確に判断するのは難しいという。韓国ではマリファナは厳しく禁止されいるが、急成長している闇大麻のカウンターカルチャーが存在しており、そこに彼らの製品をアピールすることになるだろうと、シンディー氏はいう。

いずれメインストリームに

先述のPR会社、ノースシックスエージェンシーリッツェッタ氏は、マリファナに寄り添う企業が直面する最大の課題は、合法化に伴って急速になくなるように見えるものの、根強く残っている薬物にまつわる悪いイメージだという。「1年半前、合法大麻関連企業をマスコミに売り込むのは本当に難しかった。きっと笑われたことだろう。もはやそのようなことは起きない」と、彼は語った。

「大麻カルチャーの一部になることは、誇りであり、恥ずべき秘密ではない」と、大麻を中心にしたサブスクリプションサービスを提供する、スタッシュ・ボックス(Stash Box)でブランドパートナーシップ担当ディレクターを務める、ミッシェル・ジレスピエ氏はつけ加えた。

 

雑誌システムのマリファナ特集号向けクリーチャーズ・オブ・ザ・ウィンドのカプセルコレクション

雑誌『システム』のマリファナ特集号向けクリーチャーズ・オブ・ザ・ウィンドのカプセルコレクション

 

そして、大麻ムーブメントにいま乗っかろうと計画しているファッションブランドは、大きく報われることになるだろう。

大麻業界に関する、ニューフロンティアデータ(New Frontier Data)の最新年次報告書によれば、2016年の合法大麻市場は推定72億ドル(約7200億円)の市場であり、年率17%の成長が予測されている。医療マリファナの売上高は2016年の47億ドル(約4700億円)から、2020年には133億ドル(約1兆3300億円)に増加すると予想され、成人嗜好用マリファナ販売は、同期間で26億ドル(約2600億円)から112億ドル(約1兆1200億円)に急増すると予想されている。

「これから先、大麻業界は、スターバックスやメルセデスなど、皆が慣れ親しむメインストリーム・ライフスタイルブランドを生み出すことになるだろう。現在、マリファナにひらめきを得ているもののほとんどが、ニッチファッションブランドだとしても、それは変わる運命にある。つまり、どのメインストリームブランドが最初に着手するかどうかということが残されているだけだ」と、リッツェッタ氏は語った。

Jessica Schiffer(原文 / 訳:Conyac)